分割協議中の消費税の納税義務の判定

2015年5月14日 カテゴリ: 相続

民法909条
遺産の分割は相続開始の時に遡って効力を生ずる

 
(相続税の申告)
相続の申告は、相続発生後(通常は被相続人の死亡後)10カ月以内に申告しなければなりません。
その間に分割協議が整わなかった場合は、法定相続分により分割したと仮定して申告することになります。
しかし、その後において分割協議が整った場合、実際の分割割合によって申告をし直すことになります。
 

(消費税の申告)
相続があった場合の納税義務の判定は、被相続人の事業を承継した相続人の基準期間(2年前)の課税売上高が1000万超の場合は、その相続人は当然に消費税の納税義務者となります。
しかし、相続人が会社員等で免税事業者であった場合は、被相続人の基準期間の課税売上高により、相続人の納税義務を判定します。(消費税法第10条)
 

例えば、
被相続人:A  相続人:子Bと子C
 
○H25年の被相続人の課税売上高  2000万円
 
○H27年1月20日  被相続人が死亡
 
○H27年11月20日  相続税の申告期限
 法定相続分で申告 H27年の基準期間H25の課税売上高は、B:1000万 C:1000万
 子B、子C共に1000万以下のためH27の消費税は免税となる。
 
○H28年5月14日  分割協議成立し、子Bが事業を承継することに。
 
相続税と同様に、遺産の分割が相続開始の時に遡るとすると、子Bの基準期間の課税売上高は、2000万となり、子BのH27の消費税は課税となる。
 
しかし、大阪国税局による照会者に対する文書回答によると、

「消費税法第10条の適用は、適正な事実関係に基づき、法令等で定められた方法で納税義務が判定されていれば、その判定を認めると解するのが相当とされる。照会者は、消費税法基本通達1-5-5を適用し、未分割の場合における納税義務の判定を適正に行っているため、本件照会においては、改めて納税義務の判定をする必要はない」

 
としています。
 
つまり、相続税の場合と違い、遺産の分割を相続開始の時に遡る必要はないということになります。
これは、消費税の性格上、事業者が事前に納税義務の有無を予知すべきだからという理由のようです。
事前に予知しておかなければ、消費税の転嫁、簡易課税の届出の提出など、事前に準備が必要なことがあるからとのことです。
 
ちなみに、これと同じような文書回答が過去に東京国税局でありました。