死亡退職金は相続財産か?

2015年6月20日 カテゴリ: 相続

皆さん、こんにちは。

大田区蒲田の相続・事業承継をサポートしている松島税理士事務所です。
  

今日は死亡退職金のお話。
  
死亡退職金には2つのケースがあります。
  
1.被相続人が死亡前に退職し、退職金の支給が確定したが、退職金を受領する前に死亡した場合
  
2.被相続人が死亡したため、遺族に対して死亡退職金が支給された場合
  
一般的に、2は遺族の生活保障を考えて、会社が退職金規定等で遺族に支払うことを定めているものです。
  
これら2つのケースの死亡退職金は、「相続税法」と「民法」では取扱いが違います。

    
   
<相続税法の考え方>
   
「みなし相続財産」となります。法定相続人一人当たり500万の非課税枠があります。
   
しかし、あくまでも相続税を計算するための「みなし財産」であり、分割協議の対象となる相続財産(遺産)ではありません。
   
死亡退職金は、下記の理由から、原則、分割協議の対象から外れます。
   

  
<民法の考え方>
   
民法では、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」 とあります。
   
通常、会社の退職金規定等において、死亡退職金を受け取る人が誰なのか、その順位などが定められていると思いますが、死亡退職金は、その規定における受取人の固有の財産ということになります。
   
「死亡退職金の請求権」という権利は、受取人の固有の財産であり、被相続人の権利(財産)ではないということです。
   
   

<注意をしたい退職金規定の言い回し>
   
死亡退職金は受取人固有の財産です。判例でも示されています。
   
しかし、会社の退職金規定の言い回しによっては、相続財産(遺産)として、分割対象となる可能性があります。
   
死亡退職金が、被相続人の給与の後払い的な性格を示す言いまわしの場合は、被相続人の相続財産(遺産)として分割協議の対象となる可能性があります。
   
しかし、受取人の生活保障という意味合いの言い回しをしていれば、受取人の固有の財産として、分割協議の対象から外れます。
   
分割協議書の記載にも気を付けましょう。
   
遺産ではないものを遺産であるとの前提で遺産分割協議をしてしまうと、後から錯誤無効(民法95条)の主張がされる可能性があります。
   

   
<参考>
  

第八百九十六条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
  
第九十五条  意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。